第2章 薄桃色の世界
僕の緊張とは裏腹に勢いよく引き戸が開かれる
「失礼しまーす、先生いますかー?」
ヒナの声が保健室に響く
全体を見回すと先生の姿はなく真ん中の椅子に三年生が座っていて
その目の前に菅原先輩がいる
ある意味僕の中で限界がきた
「あ、木江さん!隣は…あの時の!」
「我が部自慢のベーシスト、鹿瀬恵樹です!以後お見知りおきを~」
ヒナはよくバレー部に行ってるからフランクに話しかけられて
正直ちょっと羨ましい
「そういえば先生いないみたいですね?菅原先輩、アヤを頼んでもいいですか?」
僕を見るヒナが軽くウィンクしてソファのほうに僕を座らせた
ちょっとこういうところが頭痛い
そそくさとヒナは退散して傷の手当してた先輩も授業に戻り
自然に菅原先輩と二人きりにされてしまい
顔の温度も心拍数も上がってしまう
「俺、保健委員だから先生いない時戻ってくるまでいなきゃいけなくてさー」
僕の座ってるソファに腰かけて少しだけ離れているが気さくに話しかけてくれた
ヒナのおかげでもあるがとても嬉しい
「僕はあんまりいないんですけど図書委員やってます…」
「へえ!そうなんだ!
じゃあ今度参考書借りたいから鹿瀬さんがいるとき行こうかなー」
背伸びをしながら言うその姿を横目で見つめる
目線が合わさりそうになると慌ててそらしてしまう
すごく初めての感覚過ぎて整理が追い付かない
「それなら、僕水曜日が部活オフですし、今は爪痛めてしまって部活休んでますしいるかもしれないですね」
「え?!爪?大丈夫?」
右側に先輩が座っているから、彼はすかさず右手を凝視してくる
割れてしまってる右手の親指と人差し指を見せる
治りかけているがまだ爪の中が少し黒く変色してしまってる
「うわ…痛そー…」
「まあ少し押したりすると痛いですけどね、何もしなければ大丈夫です」
他愛のない会話を部活メンバー意外とするのは久し振りで
戸惑いや緊張もあるが我ながらスムーズに会話できただろうか
少しの時間だが先輩の事がわかった気がする
やさしくて、観察眼の鋭い人
黙っているよりも少し話していたほうが僕の気がまぎれることも分かってくれていたのだろう
しばらくすると引き戸が開く音がして先生が戻ってきた
「じゃあ鹿瀬くん、またね!失礼しましたー」
ちゃんと話せた。僕はベッドに横になる。
