第3章 保健室の貴公子【そらる】
心臓が大きく音をたてた気がした
そらるにも聞こえるんじゃないかってほど大きな音だった
ドクドクと小動物のように早く脈打つ
隠しきれない体の紅潮に恥ずかしさがこみ上げてくる
『でも、私達初対面、だよ?』
「違うよ」
私の言ったことに即座に反論の意を投げつける
「花子は、覚えてないかも知れないけど一回だけ俺たち会ってるんだよ」
真剣な顔付きでそらるはそう言った
「入学式の日に、俺迷ってたんだよ。そしたら花子がたまたま通りかかって笑って俺の手をとって教室まで連れてってくれた」
そう、だったような気がしないこともない
私のお姉ちゃんがここの卒業生でよく遊びに来てたから校内地図には詳しい
「その時の笑顔がきれいで、一目惚れしたんだ」
『え、ちょっと待って。それって三年間片思いしてたとかってことある?』
「全然あるよ」
自分で聞いておきながら返ってきた答えに恥ずかしくなる
「入学してからずっと特進クラスにいたから花子と関わる機会がなかったんだ」
なんかすごいしれっと自慢されてる気がするんだけど気のせい?
「もう三年間も終わるだろ?だから諦めかけてたんだけどさ、運よく関われて」
心底嬉しそうな表情を浮かべるそらる
やわらかい笑みに心臓が弾む
「花子、改めて言うけど。君の笑顔に惚れました。好きです、付き合ってください」
優しく、温かく、そしてどこか寂しそうな笑顔
複雑な感情が入り混じった。そんな笑みだった
『......まだ、そらると知り合ってホントに間もない』
俯きながら相手にしか聞こえないほどの声量で
『私こそ、よろしくお願い、します....』
「ふは!なんで敬語なの」
嬉しそうに笑ったそらるは腕を広げた
一瞬戸惑ったがいいや!と思い、その腕に飛び込んだ。
_____Fin_____
番外編予定してます!乞うご期待!