第4章 君だから。【まふまふ】
冬の冷たい風が頬を掠める
あまりの冷たさに目を細める
月が、顔を出し始めた
私は、頑張ったじゃない
もう、いいんじゃないだろうか
十分頑張った
誰に認められずとも
誰に褒められずとも
誰に尊敬されずとも
誰に、愛されずとも
目を瞑れば今までの記憶が鮮やかに蘇ってくる
滑稽な自分の姿に思わず笑いが零れてしまう
なにをしたって上手くいかない。
最後くらい、誰にも知られず鮮やかに死にたいものだ
東京の某所某ビル
人通りの少ない廃ビルは寂しさを誘うには十分すぎた
寂しさと悲しさ。そしてこの世の未練に手を振るために大好きなあの人の曲を口ずさむ
そろそろかな~と思い屋上の縁に踏みよる
片足を空に浮かせる
死と生の瀬戸際に思わず歓喜の笑みが零れる
これで、やっとあの子のもとに行ける
これで、やっとつらい思いをしなくて済む
先に逝ったあの子の背中を追って自殺をする娘
親不孝でごめんね、お父さん、お母さん