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【ヒロアカ】19Hzの瞳孔

第2章 はじまり


豆腐とわかめの味噌汁、鮭の塩焼き、だし巻き卵に大根おろしを添えるーー。

「お米は…あと十分ちょっとか」


バタンと音がして、同居人の帰宅を告げる。

鮭の塩焼きをのせた黒皿の端に、うっすらと焼き目のついた卵焼きを置きながら、雪のような白髪の少女はリビングのドアを一瞥した。


金色のドアノブがガチャと回り、金髪の細身の男が入ってきた。

「おかえりなさい、パパ」

「ただいま、エマ」

「今日も、大変だったみたいだね」

「エッ、あぁ…ウン」


巨体をびくりとさせて驚くのを見、エマは悪戯っぽく目を細め、「咎められるようなことを?」と尋ねた。


「いやまさか…!」

「何かあっても、私には無かったって言うか」

オロオロしながら言い訳を始めるのを横目に、作業用BGM代わりに流していた映画を停止して、ニュースに変える。


この映画はたしか…SFモノだったか。

主人公のヒロインがラスボスのクローンで、命令に逆らえないヒロインが、結局ラスボスを庇う形で主人公に殺されるやつ。

年齢制限アリ、最近あまり見ないようなグロテスクな作品だったな、と金髪の男ことオールマイトは思い出していた。


「なにか、良いことでもあった?」

食卓に運ぼうと、2人分の茶碗と味噌汁を受け取りながら、エマの硝子玉のような目がじっ、とこちらを見た。





ーーー


良いこと、それは良いことがあったなと、オールマイトは噛み締めるように少し思い出す。

今日会った、緑谷出久という少年。
ずっと探していた、自分の意思を継いでくれる英雄を。

オールマイトは自身の個性『ワン・フォー・オール』を彼に譲渡する約束をしたのだ。

「そうだね…、素敵なファンの少年と会ったよ。」

ん、とエマに目線だけで続きの言葉を促される。

「無個性だが、誰よりもヒーローだった」
「そう。」

興味があるのかないのか、そのまま続きを促さずに、エマは鮭の身をほぐして白米の上にのせた。


『ーーヴィランに捕まった中学生は、No.1ヒーロー、オールマイトが到着するまで単身抵抗を続け…』



「ーーあれは、」

テレビ画面を一瞥したエマは白米に届きかけていた箸を置いた。



「エマ、どうかしたかい?」
「…いいえ、なんでもない。」




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