第7章 変わって行くもの
「体はもう痛まぬのか……?」
「…はい」
「ならばもう、抱いても問題はないな?」
「っ、それは……」
抱いてもいいかなんて初めて聞かれ、どう答えればいいのかを迷った。
「答えずとも良い。そのまま俺に集中しろ」
「ん、……」
別の人だろうか…?
それ程にこの日の信長様の抱き方は優しくて…今までの夜とは違っていた。
気を抜いたらキスをせがんでしまいそうな感覚の中、信長様の腕の中で与えられる快楽に、私は何度も昇り詰めた。
・・・・・・・・・・
「眠っておる間だけは、許せ」
疲れ果て深い眠りに落ちる紗彩の唇にそっと唇を重ねる。
どんなに奴を抱いても癒されない渇きは、奴の唇を感じるだけで途端に満たされて行く。それでもまだ渇きは癒えない。
初めて抱いた時から、紗彩は口づけられる事を拒んだ。
拒まれれば拒まれるほど喉に渇きを覚えて、奴のやわ肌に吸い付きキツく痕を落とす事でその苛立ちと渇きを鎮めようとした。
好いた男がおるのやも知れん。
記憶喪失を装いながら、心の中では好いた男の事を考え俺に抱かれておるのか……?
そう思えば思うほどに心は渇き苛立ちが募る。
紗彩の心はどうすれば俺のものになる?
貴様は、どのように俺を見つめその唇を許す…?
眠る貴様ではなく、見つめ合い口づけあった時、俺の渇きは本当に癒されるであろうか?
「ふっ、俺らしくもない」
手に入らぬなら奪うまでのこと。
城も、土地も、人も同じだ。
そう思い、奴の事も無理やり手に入れ俺のものである事を思い知らせる様に扱って来た。
……だが、傷つき悲しむ紗彩をこれ以上見てはおれん。
これ以上、奴を壊したくはない。
だから此度も奴が回復するまでは会わぬと決めていた。
会えばその肌に触れ奪い尽くしたくなると分かっていたからだ。
「紗彩、俺を愛していると言え」
……いや、言わなくてもいい。
ただ貴様が俺を、その綺麗で真っ直ぐな瞳で見つめて口づけるだけでいい。
そうすれば俺は貴様を…この世の何よりも大切に、幸せにしてやるのに……