• テキストサイズ

おとぎ話の続きを聞かせて【イケメン戦国】

第7章 変わって行くもの



帰蝶と会っていた呉服屋からお城までの道のりは酷く気の重いものだった。

協力はしないってことは伝えたけど、それを了承した感じには見えなかった。

それどころか、

『暫くはあの天主に近づくな』

って、お城での過ごし方まで決められて…

確かに私には行く所なんかない。それはこの時代だけじゃなく、現代に戻れたとしても…私には帰る家はない。

だから帰蝶は、私が何を言ったってお城に戻るしかないって思ってる。

「このままどこかへ行こうかな……」

何もかもが見透かされているのは悔しくて、心の声が思わず口をついて出た。

「紗彩様?」

その言葉を聞いた護衛の人がギョッとした顔をして私を見た。

「あ、お団子食べに行こうかなって意味です」

「そうでしたか。ですが今日は寄り道は禁じられておりますのでこのままお戻り下さい」

「はい」

そうだ、護衛という名の監視付きなのだという事を忘れていた。


『俺が貴様を生涯買い続ける。この城で俺の女として生きて行け』

体を売ってでも生きて行くと言った私に言ったあの言葉と、

『俺は貴様を手放す気はない。他の男にくれてやるつもりもな』

そしてその後に言ったあの言葉と、その日以来私につけられた監視…

権力者という人種はきっと、一度手に入れたものが他の人の手に渡るのは嫌なのだろうな…と、あの時の私は思ったけど…


『お前は…男と言うものを何も分かっていない』

帰蝶は私の考えを真っ向から切り捨てた。



(男の人の気持ちなんて私に分かるわけないっ!)


初めて愛して、いっ時は愛されていると感じていた男には、他の男の元へ行けと放り出された。
(さっきだって、好きでもないくせに私に口づけて私の機嫌を取ろうとした)

そして放り出された先では情婦として囲われる日々…
(一生買い続けるって…本当に情婦として見てなきゃ出ない言葉じゃないの?……あ、もしかして…飼い続けるだった?ってそれでも同じだ……)


何があろうと強い思いで愛し続ければ、いずれは愛してもらえると思っていたけど、それは叶うどころか人を傷つけ命を奪う結果となった。

だからもう愛を請うことはしない。
帰蝶にも縋ったりしない。


それでも…本当に愛される喜びを知れば、男心が分かる日が私にも来るんだろうか………?



/ 178ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp