第13章 目覚めさせる方法
〜京 本能寺〜
「信長様、ただ今早馬が到着し、甲斐の武田、越後の上杉との停戦を無事取り付けたとの事」
馬に跨り本能寺を見据える俺の元に、待ち望んでいた知らせが届いた。
「良くやった!使いの者を良く休ませてやれ」
「はっ!」
「信長様、憂(うれい)は一つ取り除かれましたね」
報告に来た者が去って行く背中を見ながら、同じく俺の横で馬に跨った秀吉が安堵の言葉を漏らした。
「そうだな。各地の反乱もまだ完全には治っていない中、京で帰蝶とやり合うにはあの二人に大人しくしてもらわねばならなかったからな」
未だ雌雄を決していない奴らに動かれては、西と東の両挟みになり織田は総崩れとなりかねず、光秀を使者に立て停戦の申し入れをしていた。
だが安土でその吉報を待つ余裕はなく城を発った為、締結できるか否かは一つの賭けであったが、攻撃を仕掛ける直前で聞けたのは幸先が良い。
「兵たちの士気も上がりますね」
憂の去った顔で秀吉は力強く本能寺を睨みつけた。
「そうだな。これで心置きなく奴らを打ちのめすことができる」
目の前の本能寺には、帰蝶と毛利率いる足利義昭軍が陣を構えている。そしてその陣を取り囲むのは我らが織田の武者達。
「御館様にお知らせ致します!敵はかなりな量の鉄砲と大筒を寺の中に持ち込み配備している模様っ!」
偵察に行かせていた者が戻って来るなり焦りを滲ませそう伝える。
「……そうか」
報告を聞き終えた俺は、本能寺を再び見据えた。
「阿呆が、この京の町を火の海にするつもりか」
この様な場所で大筒を使えばどうなるかなど分かるであろうに…、完璧を求める為ならばどんな犠牲をも厭わぬ奴の性分は変わってはおらんらしい。
そしてその犠牲の中には紗彩も含まれている。