第11章 別れの準備
「………っ、……ぁ、っ、はぁ、はぁ、………」
信長様の体の重みを感じて、背中は絨毯へと深く沈んで行く。
体の力は完全に抜けて、時折ピクンピクンと体が小さく跳ねた。
「まるでウサギだな」
そんな私を、信長様は私の胸元で笑った。
「っ、言わないで下さい。体が…止まらなくて……」
体はイッたままで、未だ私の中にいる信長様のモノをキュウキュウ締め付けているのが自分でも分かって恥ずかしくて仕方がない。
「まだ離れたくないのは俺だけではないという事だな」
信長様は体を起こして再び熱のこもった目で私を見た。
私の中で繋がったままの信長様のモノは、とっくに元気を取り戻している。
夜は始まったばかり。
「………」
目を閉じると、信長様の唇が重なった。
唇がわずかに触れただけで心が震えたのも、信長様だけ。
あの日、躊躇いがちに私に口づけた信長様の事を忘れない。
「紗彩、愛してる」
「え?」
「貴様を愛してる」
「っ………」
それは、生まれて初めて受けた愛の告白。
信長様はいつも真っ直ぐに気持ちをぶつけてきてくれたけど、言葉に出して言われたのはこれが初めてだった。
(ああ、やっぱり記憶喪失のフリなんてしなければよかった)
そうすれば、この愛の告白が私の初めてだと信長様に伝えることができたのに。
そして、私も同じ気持ちなんだと、言う事ができたのに……
信長様はきっと私の返事を待ってる。
でも、
「信長様………」
嘘をつき続ける今の私にはまだ言えないから、信長様の顔を引き寄せて触れるだけのキスをした。
「………っ、」
驚きと戸惑いの顔が私を見下ろした。
こんな時までズルい私でごめんなさい。
でも私は、信長様の側にいたい。
後わずかでもいい。
あなたに愛されていたいから…
最低な私を、どうか許して。
込み上がって来た涙を見られないように信長様に抱きつくと、信長様は小さくため息を漏らして私をきつく抱きしめ返し、体を再び揺らし始めた。
硬い胸も、熱い吐息も、私を愛おしそうに抱きしめてくれる逞しい腕も、忘れない。
何より、こんな幸せな気持ちにしてくれたのは信長様だけ。
信長様、私もあなたを、とても愛してる。