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おとぎ話の続きを聞かせて【イケメン戦国】

第11章 別れの準備







「…………」


「……紗彩様っ!」


「……は…な?」

「はい。花です。紗彩様、良かった。ご気分はいかがですか?」

「気分……?……ぁ、」

(私…倒れたんだっけ……?)

心配そうに私の顔を覗き込んでいる花の目には僅かに涙が浮かんでいる。

「花…泣いてるの?」

花に触れたいけど、何故か体が重くて指先しか動かない。

「っ、すみません。嬉しくて……」

(嬉しい?)

「どうして……?」 

「だって…、紗彩様、五日も目を覚まさなくて不安で……」

「…………え?五日……っ!?」

(だからこんなにも体がだる重いの……!?)

「でも安心しました。あっ、信長様にお知らせしなくては。あと医師も呼んで参りますので、暫くお待ち下さい」

スクっと立ち上がった花は急ぎ足で部屋の外へ出ていった。

パタパタと花の足音が遠ざかっていく。

五日も目覚めないなんて事…あの飛行機事故以来一度もない。

それに、

段々と、目を覚ますまでの間隔が長くなっていってる!?


最初は軽い眩暈だったのが、倒れる様になって、寝込む様になって…今回は五日も目を覚まさなかったなんて……!?


「……っ、怖い」

(死ぬことが怖いっ!死ぬことなんて、怖くないって思ってたのに…、目の前に命の期限を突きつけられると怖くて仕方がない)



「紗彩っ!」

「!」

不安に押し潰されそうになっていると、信長様が襖を思いっきり開け放って部屋へと入って来た。


「紗彩っ!」

顔を合わせる間も無く横たわる私の背中に手を入れて抱きしめられた。


どこから走って来たんだろう?
信長様の少し早くなった鼓動が私の胸に伝わって来て不安が和らいで行く。

死ぬことは怖い。怖いけど、信長様の命と引き換えにしてまで長らえたいわけじゃないと、それだけは強がりでも何でもなく思えてしまうから不思議だ。

「ご心配をおかけしました。もう大丈夫です」

慣れて来た体には力が入る様になり、信長様の身体を抱きしめ返した。


「貴様の大丈夫は信用ならん」

信長様は私を更に強く抱きしめる。

「信長様。少し苦しいです。息ができません」

「紗彩……」

腕を緩めて体を少し離すと、大きな手が私の頬に当てられた。




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