第9章 ぬくもり
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差し込む日の眩しさに目が覚めた。
「………ん」
久しぶりに、気だるさを覚える朝だ。
昨夜の信長様は確かに激しく私を求めたけど、それでも抑えてくれていたのではないかと、今の自分の状態からそう思った。
「目覚めたか?」
信長様はすでにお着替えも済まされ、私の横に座って私の髪を触っている。
「はい。おはようございます」
「水を飲め」
私の体を起こして、信長様は椀に入ったお水を渡してくれた。
「ありがとうございます」
喉はカラカラで、ゴクゴクと喉を鳴らして椀の中のお水を飲み干した。
「ふっ、慌てずともまだある。ゆっくり飲め」
がぶ飲みする私を見て信長様は目を細めて笑う。
(良かった…昨夜よりも調子は良さそうだ)
苦しそうだった顔はいつもの自信に満ちた顔へと変わっている。
「それだけ喉が渇いておるのなら腹も減っただろう?貴様の好きなものを用意させた」
そう言って指差す先には、例のフルーツ盛り。
「ふふっ」
「やはりアレには貴様を笑わす力があるようだな」
そう言って笑う信長様に、やはり私はまた笑ってしまった。
天気が良いから縁側で食べようと言われ、素早く着替えを済ませて信長様の横に座った。
「美味しいです。でもこんなにたくさんは食べられません」
「少しずつでいい。食べられる量を増やして行け」
「はい。でも甘いものばかり食べてると体全部が水菓子みたいに甘くなるかも…、ふふっ」
(本当に食べ過ぎて糖分過多にならないかしら……)
「それは困るな、すでに甘い貴様がもっと甘くなっては今以上に手放せなくなる」
私の横髪をひとふさ手に取り、信長様は何とも甘い一言を口にした。
「っ…………」
まるで、恋人同士がするみたいな会話に胸がトクンと跳ねる。
熱い眼差しを向けられて戸惑っていると、
「いつまで側女と戯れているのですっ!」
庭先から聞こえて来た母上様の声によって温かな雰囲気は壊された。