第9章 ぬくもり
「……っ、何をしている!」
この細腕のどこにそんな力があるのか、俺の動きを紗彩が封じ込める。
「どこにも行きません!言ったはずです。構いません……と」
「………っ!」
分かっている。
貴様がどれほどに我慢強い女かと言うことは…
俺から力づくで押さえ付けられても、女中達からどれほど理不尽な仕打ちを受けようとも、貴様の心は綺麗なままで変わらない。
「……っ、後悔しても知らんぞ」
そんな貴様だからこそ、俺は貴様を手に入れたくて、その心を己に振り向かせたくて、仕方がなくなる。
「記憶のない私に後悔するものなんてありません。でも今信長様を一人にしたら、私は…その方が後悔する気がするんです」
「っ………」
奴が、俺のことを思いその身を差し出す。
それは、待ち望んでいた奴からの第一歩だった。
タガが完全に吹き飛び、奴の体をキツく抱きしめ返した。
「バカな女だ…逃げる機会を逃すとは」
もう、抑えは完全に効かない。
「しかと俺にしがみついてろ」
何度も俺から逃げようとした紗彩が俺を受け止めると言う言葉に余計煽られ、はちきれんばかりに己の楔は膨らんでいる。
「はっ、……はぁ、…あっ、あぅ、ぅ、……」
加減のない注挿に紗彩は甘い声に混じって呻き声を漏らす。
その苦痛に歪む顔すら俺を煽る材料となり、更に奴を責め立てる。
「っ、紗彩……」
「あっ、……ぅっ、……」
俺の背中にある奴の手は、爪を立てることを抑えて手を握りしめている。
「紗彩、爪を立てて構わん。貴様の痛みを俺にも分けよ」
「っ、はっ、あっ、」
紗彩はギリっと俺の背中に爪を立てた。
「……っ」
痛みは甘く背中に広がって行き、やはり俺を駆り立てる。