【IQ2】水を被るとフォーゼになっちゃうふざけた体質な月島
第3章 6月
鯉登さん、好い人がいるんですね
先日の昼休みの会話である
「(あれはだったのか!!)」
脳天に雷が落ちるような感覚を覚えた
自身が色恋からすっかり離れていたとは言え、こんなに近くで気付かないとは思っても見なかった
「(の奴、俺の見立てだとアイツも気付いてない…よな?
まさか付き合ってるか!?
いや……俺と同居しているし、それは無いよな
止めるか?
駄目だ、今出ていけば同居関係をばらすようなものだ
鯉登さんが納得できる、嘘の説明が出来る自信がない)」
狼狽えていると、廊下の向こうで玄関扉が閉まる音がした
「しまった、出ていってしまったか」
寝室を出て、二人が出ていった玄関を見つめる
「………良いじゃないか
若い二人の恋をオジさんが邪魔することもない
二人が付き合うなら、付き合えば良いさ」
ははは、と自虐的に笑いながらリビングのソファに座ると、彼女が気に入っているクッションが目についた
同居だけ、と言う間柄ではあるが、このソファに並んでテレビを見たり、彼女の希望で犬の姿になり膝に乗る事も多かった
彼女の天真爛漫な笑顔が脳裏に浮かぶ
「…………」
ゆっくりと立ち上がる
静かに向かう先は、風呂場であった
「鯉登さんは大切な大口得意先のご子息だ
一時の恋愛感情で気軽に付き合うべきじゃない
そうだ…、俺は、鯉登さんが心配なんだ…!」
誰に言うでもなく呟くと、シャワーの線を捻り、冷水を思い切り被った