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ゆりかごに甘噛み (R18)

第2章 *・゚・夜を結う*・゚*【不死川実弥】



「また、好きなときに、いつでも来りゃぁいい。俺がいても、いなくても」

「───…」

「したらそのうち──…」





 ザァ···。

 寧々の背後で、落葉樹の枯れ葉が渦を巻く。

 開いたままのドアから冷えた風が吹き込んで、いくらか車内の熱を奪っていった。



「うん?」

「···いいや···。引き止めちまって悪かった···。ホラ、冷えねェうちに早く中行けェ」

「うん。実弥くんも気をつけてね」

「俺ァ寧々が部屋引っ込むまでここで待機してっからよォ。着いたらメッセしてくれやァ」

「毎回そこまでしてくれなくても大丈夫なのに」

「何が起こるかわかったもんじゃねェからなァ、このご時世」

「実弥くんて過保護だよね」

「······言ってろォ」



 こうして寧々は、今夜も折れない実弥にお礼とおやすみなさいを告げて、帰宅後『到着しました!』のメッセージスタンプを送信するのである。














    *



 帰り道、実弥は愛車を走らせながら、さきほど口走りかけて引っ込めた言葉を思い出し、熱の宿った耳たぶをカリカリと引っ掻いた。



 ( まだ、スペアキー、渡したばっかだっつぅのによォ··· )



 自分の気持ちだけが先走ったような気がして。







「···帰したくねェのは、俺だなァ···」







 独り言つ。










 『──…そのうち、一緒に暮らさねぇか』









 橙に照る道路の先を真っ直ぐ見据える。

 いつか言えるその日を願って、実弥はアクセルを踏み込んだ。













               * F i n *



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