第1章 月島軍曹に出会う
「月島ぁ」
「はっ」
小樽にある第七師団の支城
自身の席に腰かける鶴見中尉と、前で手本のような敬礼の形を取る月島軍曹がいた
「先日の和田大尉゛行方不明゛の件だがな、面倒な事になったぞ」
「面倒……とは?」
鶴見中尉が掌を軽く上げると、月島軍曹は休めの姿勢へと変更した
よく慣れたモーションだ
「和田大尉の娘さんが、第一師団の中尉であらせられるのは知ってるか?」
「はい、陸軍初の女性兵として有名ですから」
「その娘が、今度うちの大尉としてご着任されることが決まったぞ」
「そうですか」
「月島軍曹、彼女の補佐役をしてやれ
可愛がってやりなさい?」
鶴見中尉がにやりと笑う
歯茎がぐわりと見えた