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綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束





淡い陽の光が射し込んで、瞼を持ち上げると見慣れた天井の木の目と目があった
人の顔みたいで怖いとお母さんによく泣きついたっけ
今ではすっかり慣れっこだ

怖かったもの、好きだったもの
時と共に移り変わっていく。けど、私は孤独は怖いままだし好きなものも甘い卵焼き
私の心は成長していくのだろうか
天井の木の目が怖くないくらいには成長したけど…

けど、体は人肌を求めているし男性の温もりを知っている
心と体の均一がとれていないのだろうことは自分でもよくわかった

私は再び目を瞑る
まだ起きなくていい
お腹も空かないし、やる事もない
私があの人に会うのは、月曜日と金曜日
どうしてこの曜日なのかは聞いたことがないからわからない

特別大切な約束でもないけれど、なんとなくこの為に生きている気がする

「昨日…雨あんまり降らなかったな。お花にお水あげなきゃ」

私を待っている唯一の存在
庭に咲く花
のそのそと布団から出ると、雨戸を開ける
そんなに降らなかったはずの雨と土の香り

梅雨の訪れを教えてくれているような香りは、雨の憂鬱さを思い出させた

縁側から庭に下りると、紫陽花に朝露が光っていて指でツンと触ってみる

「あなたはいいわね。咲いているだけで愛でてもらえて」

煉獄さんと宇髄さん、いつ来るのかな
来る時は事前に連絡とかあるのかな
でも、もしこなかったら?

約束は嫌いだ
成せもしない約束に何度も振り回されたから

————妻とは別れる。約束する。だからもう会わないなんて言わないでくれ

別れてどうするの?私と一緒になるの?
別に望んでもいないこと、できもしないことを平気で口にする
でも私は私で誰か拾ってくれるなら…と期待する

けれど結局それは嘘で、都合よく抱ける私を繋ぎ止めておきたい嘘
私がまた会えば、そんなことなかったかのようにされている


「お水いらなかったな」

葉に滴る雫と適度に湿った土
水々しく咲く花

「やることなくなっちゃった」

こんなことを毎日繰り返している

「早く2人に会いたい…」

約束は嫌いと言いながら、結局期待してしまっている
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