第1章 歪なカンケイ
いつもは一人の、暗くて寂しくて、寒い部屋。
でも、たまにそれが真逆になる時がある。
今日はその日らしい。
「あっ、ん……あぁっ……」
「脚、もっと開いて」
腰を打ち付けられる度、ビクビクと体を跳ねさせて、高い声で啼く。
セックスは好きじゃない。
だけど、彼と体を重ねるのは嫌いじゃない。
優しく甘くなんて言葉はない、ただの性欲処理だけの、義務的な交わり。
ピロートークは恋人みたいなものではなく、しない日もあれば、淡々と日常会話をしたり。
今日は何も言わずに禁煙の部屋で、開けた窓のサッシの部分に腕を置いてタバコを吸う。
彼のタバコを吸う姿が好きで、ベッドに横になってそれをボーッと見つめる。
彼は半間修二。
同じクラスなのを知ったのは最近で、授業に出てるのを見る事は少なく、神出鬼没の掴めない男。
もう一つ知った事は“死神”と呼ばれているらしい。
確かに身長がやたら高くて、何を考えてるか分からない、冷めた目で人を上から見下ろす彼のイメージには合っているのかもしれない。
左手の甲には“罪”、右手には“罰”のタトゥーが彫られている。
特に意味を知ろうとは思わないし、聞いてもどうせ誤魔化されるだけだろう。
誰にだって、話したくない事、知られたくない過去はある。
それは私も同じだ。
タバコを吸い終わり、戻ってきた彼は、自然にベッドに入って私を再び組み敷いた。
「ンっ……ぁ……」
何も言わず、何でもいきなりな男との行為に愛はないから、私達のセックスに甘い囁きや、キスはない。
「お前の声が一番いいな」
酷い男だ。
分かってはいる事だけど、さすがに他の女と比べられるのは少し癪だから、首に噛み付いた。
「痛ってっ……何、怒ってんの?」
「当たり前でしょ。そんなんで喜ぶ女はイカレてる。あんたの周りにいる女と一緒にすんな」
「あはっ、やっぱいいねぇー、お前」
「ちょ、いきなりっ……っぁ、あぁああっ……」
楽しそうに笑い、彼は愛撫も何もないままに、自らを一気に突き入れた。
こういうのは、この男といると珍しい事ではないから、もう慣れてしまった。
特に彼は喧嘩をした後、気分が高揚しているからか、突然来て乱暴に私を抱くのが通常運転だ。