第8章 新たな任務
夢主side
『はぁっ・・・ほんとに、なに』
乱れた呼吸を落ち着かせながら春千夜を見た。そんな綺麗な顔で今の私を見ないで欲しい。
「変な気起こさねぇようにって躾だよ。ソレ、隠して仕事しろよ」
・・・わざと、か。
つまりこの男、胸元と太腿につけたキスマークを必然的に隠さなきゃならなくなる様に。
普通に露出度の低いドレスで働けって言えばいいのに!
どういう意図かは知らないけど、もしかして本当にペット感覚?
「ホラ、早く服着とけよ。オレもう行かなきゃなんねェし」
『えっ・・・!ど、どっかいくの?』
てっきりこのまま抱かれるのかと思い、熱く敏感になった身体。本当に用事ってこれだけ!?
まさかの放置プレイに戸惑う。
「んな顔してんじゃねェよ、盛りすぎだろ変態。最後までシてほしかったんだ?」
『ばっ!!ばかじゃないの!そんな訳ないでしょ、ほんと最低!』
本心とは真逆の事がほいほいと出てくる天才かもしれない。ニヤっと口角を上げて笑う春千夜を見てなんだか悔しくなってしまう。
結局いつもコイツばかり余裕そうで私は振り回されてばかり。期待させといてこんな終わらせ方してくる男、初めてだ。
「・・・また来っから。今日は夜から仕事なんだよ、顔見に来ただけ」
急にそんな甘い顔で甘い言葉、ずるい。
口をキュっと結んで何も言い返せないでいたけれど、顔を見に来たという言葉にまた自惚れてしまいそう。
『・・・いつ、会えるの』
立ち上がる彼から目を逸らし俯きながら尋ねた。少しばかり理性を奪われた直後だからか、我ながら素直な質問。
「・・・さぁな、オレがオマエに会いたくなったら?」
・・・なにそれ。
私が会いたいって思った時はどうなるの?私の気持ちは無視?
って、そんな事を本人に言えるはずがないけど。
いつまでも自己中心的。
優しいようで冷たい、なんだかいきなり突き放された感覚になる。
持ち上げて落とすのが上手いなぁ、なんて。
春千夜はそのまま何も言わず、部屋を出ていった。
先程までの時間が嘘かのように静かな部屋。
ただ残っているのは、自身の身体に散りばめられたシルシのみ。
しゃがみ込んだまま少しの間、床を見つめるしか出来なかった。