第1章 組織の女
「なぁ。今回の仕事、梵天とこ行けって」
『・・・・・・え』
特にまだ仕事もない日。ソファでまったりコーヒーでも飲もうとしていた彼女に向かってそんな話をしてきたこの男の名はゼン、仕事仲間であり相方でもある。
彼女、 は犯罪組織【大蛇】(オロチ)に属している。
主に暗殺を仕事としており、情報集めやハッキングに適した者、銃の扱いに適した者、それぞれの役割に特化した者達で出来ている小さな組織だ。
は自身の恵まれた容姿を最大限に活かしたハニートラップを得意としており、お堅い男を相手とした暗殺任務を任される事が多い。
依頼された任務を遂行するのみ、一般人だろうが犯罪者だろうが依頼料を支払う相手であれば仕事を受ける。
一言でいえばただの暗殺者の集まり。
裏組織の人間であれば【大蛇】の存在は大半が知っている。
自分達で相手にするのが困難だったり、手を汚したくない場合にも依頼してくるのだ。
そして今回の任務、梵天と同行だなんて聞いた瞬間の彼女の顔はなかなかのマヌケ顔。
いくら自分が暗殺者の一員だとしても日本最大の犯罪組織を出されると少し息が詰まるのである。
『いきなり梵天って・・・しかも同行って事は依頼主ではないの?』
「そ、依頼してきたのは別。だが今回のターゲットは元から梵天がマークしてる相手なんだと。それじゃあ俺らも簡単には手出せねぇだろ?こっちが殺られちまう」
『梵天なんて姿も見た事ないし内部の情報すら全く出てこない、目付けられたら相当厄介な相手なのは分かるでしょ?
・・・依頼主に諦めて貰えばいいじゃない』
「それがなァ今回の任務で1番必要なのは、。お前なんだよ」