第1章 1
そのまま、途方にくれたようにわたしを見つめる。
その瞳には、今までわたしに向けられたことのない切なげな切羽詰まったような色が浮かんでいて、わたしの胸がドキンと大きく高鳴った。
胸が締め付けられて痛い。
「しもの・・さん・・・」
また溢れた涙を下野さんがそっと拭ってくれる。
「好きで・・・いていいんですか・・・?」
「・・・うん」
「ほんとうに?」
「・・・うん」
「ずっと?困りませんか?」
「困らないよ。・・・諦められる方が困る・・・」
下野さんがふっと照れたように笑いを漏らした。
「下野さん・・・」
「ん?」
「好きです・・・」
「ハハッ・・・うん、知ってる。・・・?」
「はい」
「俺も・・・好きだよ」
下野さんが照れながらそう言うと、わたしの頭を優しく引き寄せ、そっと抱きしめてくれた。