第1章 1
「さっき、収録が進むにつれて、どんどん顔色悪くなっていく見てたら、倒れるんじゃないかと思って心配だったんだよ。無理すんな」
下野さんの手が優しくわたしの頭に乗っかる。
「ここで無理して倒れたら、余計に周りに迷惑かけるだろ。」
「はい・・・すいません・・・」
「いや、謝らなくてもいいけど。別に怒ってるわけじゃないから。監督とかみんなには俺から話してやるから、今日はもう帰れ。ゆっくり休んで元気になってから、今日の分も取り戻せばいいから。な?」
隣に座る先輩を見上げると、優しい笑顔でにっこりと微笑んでくれた。
思わず目尻が熱くなる。
「下野さん」
「ん?どした?」
「好きです」
今まで何度となく告げたその言葉に、下野さんは困ったように微笑んだ。
「うん、知ってる」
「下野さんが好きです」
「知ってるって」
下野さんがははっと小さく笑ってベンチから立ち上がる。
ぐずぐずと立ち上がらずにいるわたしを振り返り、下野さんが手を差し伸べてくれる。
「ほら、行くぞ。俺がみんなに話してやるから」
いつも何も応えてくれない下野さんに拗ねつつも、そんな彼の優しが嬉しくて、わたしはその手をとると立ち上がった。
「ったく・・・世話の焼ける後輩だなぁ」
優しい苦笑いを浮かべる彼に手を引かれて、わたしはその場を後にした。