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キラキラ星

第3章 副社長




— 副社長 —


アイドルが嫌いだと宣言した人間を採用する芸能プロダクションなど、あり得ないだろう。しかもそれが天下のツクモプロだというのだから、さらに驚きだ。
驚くべきポイントならまだある。私を昨日採用したあの男は、この会社の副社長だという。出勤1日目にして、我が社の命運が心配になったのは言うまでもない。

月雲 了。私は今日から、彼の秘書をやるらしい。そう聞かされたのは、ついさきほど。了本人からではなく、社長からだ。秘書の経験など皆無で、昨日雇ったばかりの人間を副社長の秘書に就けるなど。どこまでも風変わりな会社である。

副社長室に通され、待たされること1時間。さらに1時間。さらに1時間。

これは、何かを試されているのだろうか。そんな疑念が私の頭を掠めたのは、3時間経ってからだった。
手持ち無沙汰で、ふと彼のデスクに目をやる。そこには、1枚のパンフレットが置かれていた。

“ 小丸百貨店 ”

まさかとは思うが、彼は仕事を放り出してバーゲンセールにでも出向いてしまったのだろうか?
どちらにせよ、ここで待っていても彼は現れないような気がする。

私はポケットの中に手を入れて、社用車のキーの所在を確かめた。


車を軽く走らせれば、ものの20分で目的地に到着。問題は、この広い店内からどうやって了を見つけるかだ。最悪、迷子捜索館内放送でも流してもらおうか。
人目を引くに十分な紫の髪色。狐のような糸目、そして意地悪そうに歪む薄い唇。しかしなかなかどうして、スタイルは良く、人を惹きつける。私の目にも、やっぱり色男に映ったのである。

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