第10章 肉球
…寝ぼけてた?
なんとなく気まずい雰囲気の中、私はキッチンに向かった降谷さんの後ろについて行った。
「これをあの短時間で?僕はどのくらい寝てた?」
「30分だけですよ?」
「…それなのに。」
降谷さんは用意されたテーブルに座り味噌汁に手を伸ばした。
「美味い。」
「よかったです。すみません勝手に食材とかたくさん使っちゃいました。」
「いい。夏目は食べないのか?」
「私は大丈夫です。一人分しか作ってませんし、降谷さんが買ってきたものですから…。ただ、お味噌汁とかまだすこし残ってるのでそれは冷えたら冷蔵庫に…。」
「おかわり。」
冷蔵庫に入れてくれ。と言おうとしたら、お味噌汁の入っていた汁碗を突き出された。
「まだあるんだろ?」
「は、はい。」
私は受け取り、味噌汁を注いだ。
チラッと降谷さんを見るとかっこむようにガツガツと食べてくれていた。
ーー…そんなふうに食べてくれて普通に嬉しい。
「どうぞ。」
「ん。」
もりもり食べていくのは見ていて気持ちいい。
「…帰ってくる前に実は組織の人間と食べたんだけどな。」
「そうなんですか?」
そうとは思えない食欲だ。
「あいつらとの食事は満たされない。」
「気を張りそうですね。」
「…不覚だ。」
不覚?
「夏目の料理がこんなに美味いだなんて。」
「…。」
不覚だなんて失礼な。
「たった30分で寝れるわけがない。ましてや横の部屋に人がいる状態で。そう思ってたんだが。…不覚だ。」
「…。」
「夏目の料理をしている包丁の音やコンロに火を付ける音を聞いていたら意識が飛んでいた。」
「もうすこし寝れたらよかったですね。」
自分では平気と思っていても、身体には疲れが溜まっているのかもしれない。
「…さっきは…その、すまない。」
「いえ。気にしません。」
本当は気にするけど平気なふりをした。
ただ、寝ぼけただけだし。
『ーー…めぐみ。』
なんで名前を呼んだのかは、私にはわからないけれど…。