第10章 肉球
食事終わりにお茶をぐいっと飲み干している降谷さんが壁にかかったシャツに気付いた。
「まさか、アイロンもかけてくれたのか?」
「え?…少し時間があったので。」
「…。」
食べ終わった食器を下げていこうとすると、降谷さんに止められた。
「いい、自分でする。」
「…?」
「そこまで君にしてもらうのは…。」
「別に負担ではありません。この家では私は特にやることないです。」
…自分の家じゃないし。
むしろ何かしていないと気まずくて仕方ないほどだ。
「結婚するか?」
「は?」
「冗談だ。」
降谷さんはにやっと笑って食器をシンクに入れていった。
何を言ってるんだと、顔をしかめながら洗い物をしていると、くくっと降谷さんが笑いながら上の服を脱ぎ始めた。
…だから、やたらめったら人前で脱がないでほしい。
そしてアイロンのかけられたシャツに袖を通した。
「僕は本庁に行くが、夏目も乗っていくか?」
と、聞かれて私は必死に首を振った。
朝まで一緒にいて、一緒に通勤だなんてそれこそなんか嫌だ。
「今日使った食材買い足しますか?」
「いや、また僕のタイミングで買うよ。」
「わかりました。また必要なら作って冷蔵庫にでも入れておきましょうか?」
「…。」
降谷さんはズボンを履きながら考えているようだった。
…だから人前でパンツになるなって。いくら部下でも女だぞ。
「いや、帰ってこれず腐らすと勿体ない。しかしまた食べたいな…。」
「時間外じゃなければいつでも作ります。」
「…君な。」
「上司のサポートも部下の務めですから。」
仕事ならやるって伝えると降谷さんは呆れながらも了承してくれた。
あとは頼む、と上司を見送り、私は片付けと軽く掃除をして、わんちゃんに餌をあげてから部屋を後にした。