第10章 肉球
ゆっくり寝室の扉を開け、コソッと顔だけ覗かせた。
薄暗い部屋。
ーー寝息。
すごい。あの短時間で、しかも私の料理の音の中に寝る事が出来たんだ。
顔を壁の方に向け、背中がこちらを向いている。
「降谷さーん…ご飯出来たんですが、もう少し寝ますかー?」
小声で話しかけてみたが、反応がない。
そんな深い眠りなのか?もしかして耳栓でもしてる?
身体を部屋の中にいれ、そっと覗き込んでみたが、耳栓はしておらず純粋に寝ているようだ。
むむっ。
私は指先を降谷さんの肩にそっと当てた。
「降谷さん?」
ーー意外だ。小さな物音でも飛び起きそうな人なのに。
肩を少しだけ揺らしてみた。
「降谷さーん?」
「…ん。」
眉を寄せ身体をこちら側に寝返ると、私の手を掴んできた。
そんな強い力ではないけれど…、寝ぼけているようだった。
「あの…どうされますか?もう少し寝ますか?」
「…んー……」
うっすら目を開けぼうっとしている降谷さんにどうしたらいいのかわからない。
可愛いーー…
「…もうすこしーー…めぐみ。」
「え?」
ぐっと顔を近づけてきた降谷さん。
手を掴んでいる手とは違う方の手が私の頬に伸ばされ、私はびっくりして後ろに下がった。
ガン!!
近くにあったローテーブルに足があたり、私は後ろに尻餅をついてこけてしまった。
「…夏目?」
「え?」
ぱっちりと目を開けた降谷さんがベッドから足を下ろした。
「あぁ、悪い。ーーー寝ぼけてた。」
「え?…ん?あの…ご飯…」
「もう出来たのか。起きるよ。」
「あ、はい。」
頭をガシガシ乱しながら降谷さんは立ち上がった。
ーー…キスされるかと思った。