第10章 肉球
自分で提案しものの、とんでもないことを言ってしまったかもしれない。
なんでこんな3時も過ぎた時間に上司の家で料理してるんだ、私は。
しかもシャワーの音がここまで聞こえてくる。
え?夫婦?
おかしいおかしい。なんでこんなことに。
さっきのことを後悔しつつ私は出汁巻きをクルリと巻いて行った。
だって、昨日はポアロに笑顔で一日中過ごして、夕方は服装からしてバーボンになっていたんだろう。
そしてこのあと恐らく本庁にみんなの報告書やらを確認しに行く。
ーー…ご飯くらい。
「いい匂いだな。」
「ぎゃあ!!」
「おい。何時だと思ってる。苦情がくるだろ。」
真後ろにいた降谷さんにコツンと頭を小突かれ私は口元を押さえた。
「あとどのくらいだ?」
「おかずは早くできそうなのですが、ご飯が炊けるのがまだ少し…あと30分以上かかります。」
「じゃあ少し寝る。」
「わかりました。出来たら起こします。」
「……あぁ。」
チラッと私を見て、降谷さんは寝室に入って行った。
少しでも音を立てないようにして、寝てくれたらそれでいい。
壁にかけられた白いシャツと、その下にはアイロン台に目がいった。
おかずはほとんど出来たし、焼き魚はご飯が炊き終わるタイミングで焼き始めたい。
私は白いシャツに手を伸ばした。
シワになりにくいシャツを買ったとしても、あの人ならアイロンをかけそうだ。
ご飯の後すぐ着ていけるようにアイロンをかけまたハンガーに戻しておいた。
「…そろそろおさかな焼こうかな。」
ご飯も後10分で炊けるはず。
準備が出来たおかずからテーブルの上に並べていく。
「よし。……起こすか。」
上司が寝てる寝室に入るのすごく嫌。
そもそも30分で寝れるのだろうか。
だからといって仕事に行くという降谷さんを止めることなんて、下っ端の私にはできない。