第10章 肉球
くんくん。
「…降谷さんの匂いがする。」
何度か降谷さんに近づいたときがあったけど、その時の優しい匂いだ。
降谷さんのベッドなんだから当たり前なんだろうけれど。
私はそのシーツに顔を埋めてみた。
「…変態かっ!」
私は顔を勢いよく上げ悶えた。
一体何をやってるんだ私は!
ーー…でも、わんちゃんが寝てるから、少しだけ。
こてんと私は降谷さんのベッドに頭を預けた。
ーー…だってこの匂い。ちょっとドキドキして…落ち着く……気がする。
ドキドキして落ち着く。なんてすごい矛盾だけれど、本当にそうなんだ。
「ちょっとだけ…。」
わんちゃんの背中を撫でながら、私は深呼吸をした。
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「起きろ」
夢でまたいつものように上司に怒られる。
リアルでいつも理不尽な要求されたり、怒られたりしてるのに夢くらい優しい上司でいてくれよ。
などと、考えていると頬をつよく押され擦られているのが分かって私は目を開けた。
「いたたたたたっ!!」
「どこで寝てるんだお前は。」
ベッドに座っている降谷さんが私を見下ろしほっぺをグリグリとしているではないか。
「えっ!?あれ!?」
頭が覚醒してきて、あのまま降谷さんのベッドに頭を預けたまま眠ってしまったことに気がついた。
「す、すみません!」
「顔に泥をつけて僕のベッドで寝るとはいい度胸だな。」
「えっ!?」
私は自分の頬を押さえた。
まさかこんなところが汚れていたなんて。
しかも私疲れて眠っちゃってた…!
「まぁ、いい。ハロも夏目の上で寝てたしな。なんとなく何があったのかわかったよ。」
「すみません。」
私は急いで帰ろうと立ち上がった。