第10章 肉球
「ちょ…ちょっと待って…調子に乗ってやり過ぎた…。」
ぜぇぜぇと肩で息をして、汗を拭った。
どのくらい遊んだっけ。つい夢中になってしまった。
「わんちゃん!帰るよ!」
「うーっ!」
「嫌そうにしない。ほらおいで。」
短いリードに変え、くいっと引っ張ると少し不満そうにしながらも私の横を歩いてくれた。
「喉乾いたね。」
私は降谷さんの家に着く前に水を自販機で買い飲むと、手のひらに少しだけ水をため、わんちゃんにも飲ませてあげた。
「ひぇ。」
ざらっとした舌にゾッとしたが、我慢して手を洗うと再び帰路についた。
家に着くと玄関にわんちゃんの足を拭くためのタオルを用意しておくのを忘れてたことを気付き、玄関で足を止めた。
「わんちゃんここでじっと待てる?」
「きゃんきゃん!」
「わっ!だめ!家上がっちゃだめ!」
足の裏は泥だらけ、身体も結構汚れてる。そんな状態で家の中で暴れたら降谷さんに殺されるっ!
私は慌てて家の中に入ろうとするわんちゃんの足の付け根に手を入れ抱き上げようとした。
「うーっわん!」
「ぎゃっ!」
身体をくねらせ暴れるわんちゃん。
「あっ、こら!言うこと聞いて!」
抱え込むように持ち上げたまま私は風呂場に走った。
タオル用意しとけばよかったーーー!
「じょ、上司のお風呂場っ!」
いいのかな…借りても。
いや、タオルを濡らして拭くだけにしよう!
なんか……降谷さんがいつも使ってるって考えただけで私には浴室に入ることは出来なかった。
暴れるわんちゃんを落とさぬよう必死に抱え、犬用タオルを濡らした。
「わっ!あ、暴れないっ!」
「きゃん!」
「耳元で吠えないっ!わぁ!あー!こらっ!」
「うぅっ!」
「痛い痛いっ!汚して怒られるのはわんちゃんだからね!いいの!?」
まずは足の裏の肉球を拭いていく。
四つもあるからもう大変だ。
とりあえず肉球を拭き終わり安心して力が少し緩まったのをわんちゃんは感じとったのか、だっと私の手から逃げ寝室の方に走り出した。
「まだ!身体拭いてないよ!ドロドロだから!」
ベッドの布団なんて汚したらそれこそ殺されるっ!!
「わんちゃんっ!!!」