第9章 笑顔の意味
犬と子供は苦手なんだ。
私はにこにこと笑顔を貼り付け眼鏡の男の子を見つめた。
「でも、2人何か意思疎通図ろうとしてたよね?」
「…へ?」
意思疎通だなんてこんな小さい子供が使うなんて、なんて頭のいい子だろうかと私は目をパチクリとさせた。
「“七瀬さん”だっけ。よく安室さんの方見てたし。」
「そう?カッコいい人だよね、あの人。」
「僕の席から七瀬さんのスマホの画面が見えたけど、何かメール送った後、安室さんが携帯確認してたよ?」
「へぇ。すごいタイミングだ!あの人もちょうど携帯見てたんだね。」
すごい観察してたんだな、この子。
私はそんなことは偶然とでも言うように、驚くふりをした。
「おねぇさん…。」
眼鏡の子はすっと目を細め私を見つめた。
「ん?」
「公安の人?」
…え?
「こーあん?」
「変装してるよね?」
「…。」
こんな子供が公安を知ってるんだ。
それに、なんで私のことをそう思ったのか。
私は表情を崩さぬよう、笑顔を貼り付けたまま少年を見下ろした。
「眼鏡には度が入ってないし。それに…それ、カツラだよね?」
「少年。世の中にはやむを得ずウィッグをつけなきゃいけない人もいるんだよ。本人に向かってそれは指摘しない方がいい。」
「…でも。」
少年はゆっくり私の顔を指差した。
「横から地毛が見えてるよ?」
「えっ!?」
私は慌てて髪の毛を押さえた。
「うそだよ。」
「…っく!」
このガキはめやがった!