第9章 笑顔の意味
商店街の資料を渡されて、フォトコンテストのことを色々と榎本さんから聞いていった。
それをスマホにメモしながら、どんなデザインにしようかと考えた。
「そう言えば私ったら勝手に“めぐみさん”って呼んじゃってましたね、めぐみさんも私のことよかったら“梓”って呼んでください。年近そうだし。」
「本当?じゃあ梓さんって呼ばせてね。」
ここが上司のいない喫茶店ならきっと仲良くお友達になれただろうが、横にはにこにこ笑う上司が見張ってる。
下手なことは言わないようにしつつ、不自然のないように親しいふりをした。
「じゃあ、僕も“めぐみさん”って呼ばせてもらいますね。」
ーーえ。
合コンの時は『夏目めぐみ』として変装なしで安室さんからもめぐみさんって呼ばれてむず痒かったのに、『七瀬めぐみ』の時まで安室さんにそう呼ばれたら、恥ずかしいんだけれど。
下の名前まで偽名を使っていない私が悪いのかもしれないが…。
取り乱さないよう、とりあえずにこっと笑って話題を変えた。
「デザインには商店街の写真とかそういうのも入れてもいいかなー。帰りに写真撮って帰りますね。」
早く帰りたくてそういうと、すかさず梓さんが手を上げた。
「なら私撮ってきます!たくさん!商店街のいいところ知ってるので!」
「えっ。」
早くポアロ出たくて行ったのだけれど、梓さんはスマホを握りしめエプロンを外すと「私も何かさせてください!」と言い、ポアロから出て行った。
ーーえ。行動力すごすぎない?梓さん。
残されたのは私と安室さんと他のお客さん1人。
えっと。
ーーー帰りたい。