第9章 笑顔の意味
「確か、ガトーショコラとカフェラテを美味しそうに食べてくださったお客さまですよね?」
「覚えててくださったんですね、ありがとうございます。」
安室さんと白々しくお互い会話をし、私は「またお邪魔させてください」と簡単に言うとその場から離れようとした。
「そういえば…デザインのお仕事されてませんでした?」
榎本さんに言われ私は帰ろうとする足を止めた。
「すごい、そこまで覚えてるなんて!」
「綺麗な女性でかっこいい仕事だったからおぼえてました。」
…もっとありきたりな仕事にすればよかったか。しかし、ノートパソコンを広げるような仕事じゃないとだめだったし。
私は榎本さんに笑顔でお礼を言った。
「ねぇ、安室さん?」
「なんです?」
「あれ、お願いしちゃダメでしょうか…。」
「あー、あれですか?どうでしょう。聞くだけきいてみましょうか。」
「ですね。」
ぼそぼそと榎本さんと安室さんで二人で話をしている。
私が首を傾げていると榎本さんが私に一歩近づき子犬のような顔で私を見つめた。
「お忙しい時にごめんなさい、お願いしたい事があるんですけど…、あっ、よかったらカフェオレ飲みにいらっしゃいませんか?もちろんタダで!」
「行きます。」
あ。あのカフェオレがタダってことに釣られて即答してしまった。
安室さん的には断って欲しかったのだろうか。
私はちらっと榎本さんの後ろで買い物袋を持つ安室さんに視線を向けた。
笑ってる。
うーん。安室さんの笑顔は何を考えているのか全然わからない。