第8章 ただの勘違い
対象者と女性が人気のない廊下へ歩いていくのを、距離をとりつつついていった。
きっと安室さんのことだから写真も撮ってるだろう。
部屋に入っていく瞬間を撮らなきゃ。
綺麗な廊下に個室になってるだろう扉がいくつか並んでいた。そこを通り過ぎ1番奥の部屋に行くのだろう。
「人がいないから目立ちます。もっとそばに。」
この個室を利用するカップルを装えってことだろう。私は必死で嫌な顔をしないよう安室さんの後ろのジャケットを握りしめながら、横を歩いた。
…ラブホテルに行くみたいな雰囲気をだせってこと?
いや、無理だよ。安室さん相手に!
「…ひゃ…」
安室さんの手が脇腹をかすめ、びっくりして声が出てしまった。
…聞こえたかな。
恥ずかしくて安室さんの方を見る事ができず、数歩先の床を見つめることしか出来なかった。
耳が熱いー…。
「……。」
安室さんは何も言わずに私の後ろから手を腰に添え歩いた。
…早く部屋に入るところを写真に撮ってよーー!拷問でしかない!
「撮った。」
ぽそっと安室さんが呟いて私は顔を上げた。
対象者が女性と部屋に入り、扉が閉まる瞬間だった。
…帰れるっ!
私たちはゆっくりUターンし、元来た道を戻ろうとしたが、その先に先程話をしていた対象者のボディガードであろう男性二人組がこちらに向かってきていた。
「…まずいな。」
「……。」
「何もせず帰っていると怪しまれる。」
「…へ?」
「…悪い。」
とんっと体重をかけかれ、ヒールだった私はいとも簡単に壁に背中を預けるようによろよろとした。
「…っ!?」
安室さんは私の頭のすぐ上に右肘を置き、左手は私の腰に手を回した。
「…キスしてるように。」
「…!!?」
ぐっと、顔が近づいてくる。
安室さんがかけているメガネの縁が私の頬に当たった。
そのくらい近い。
ふわっと、口の横に安室さんの吐息がかかって私は息を止めた。