第8章 ただの勘違い
今日の会合は各政界や医療関係者、業界関係者たちのパーティーだそうだ。
目立たないが、溶け込めるパーティードレスを買ってこいと言われて私は当たり障りのない黒いロングドレスを買ってきて、執務室で着替えていた。
安室透のパートナーとして、こんな大きなパーティーに潜入するのか…。
一体どんな大きな事件の捜査なのだろうか…
「え。浮気調査?」
「そうだ。」
資料をペラっと捲りながら風見さんが淡々と話した。
ーー…これだけドレスやらアクセサリーを用意させ、テレビでも見たことあるような有名人たちが集まるパーティーに潜入して…?
う、浮気?
「探偵である安室透への調査依頼なのだ。降谷さんがポアロで“探偵”として潜入している以上、探偵の仕事もこなさないと不自然だろう。」
「そう…ですよね。」
どんな悪事を暴いてやるのかとドキドキしていたのだが…いや、浮気だって立派な悪事といえば悪事だ。
ーー…公安が調査する浮気って。
「夫がこう言ったパーティーを抜け出し部屋に連れ込む。という手口を繰り返しているのを写真に収める。安室さん一人会場をウロウロしていては怪しいので夏目が横に立っていること。」
「はい…。」
それだけかー。
いや、仕事内容に文句は言うまい。
「簡単だと手を抜かぬよう。気を引き締めて行くように。」
「わかりました。」
風見さんの言う通りだ。
何が起こるかわからないのだから,気を引き締めないと。
私はふうっ!と強く息を吐き、背筋を伸ばし気合を入れた。
「用意できたか、夏目。」
「は…い。」
執務室に入ってきた降谷さんを見て、私は一瞬彼を上から下まで見てしまった。
ーー…似合ってる。
グレーのタキシードに髪の毛を左側だけ、ワックスで上げていて、黒縁メガネが知的な雰囲気がさらに強く感じられた。
「…目立つ格好をするなと言っただろう。」
「へ?」
降谷さんをついじっと見ていると、私の服を見た降谷さんが私を見つめながら言った。