第7章 ruff ruff !?
渡されたオヤツを片手にふるふると震える。
1メートル離れた足元には白い毛で私を見上げている犬。
オヤツを欲しそうに尻尾を振っている。
「…はぁ…はぁ…」
「犬みたいな呼吸するな。早くやれ。大丈夫だから。」
私の少し後ろで笑いながら言うけど、足が動かないんだから仕方ない。
「ほら、ハロと視線を合わせるようにしゃがんで。」
「…っ。」
肩をぐっと押され、私は膝をついた。
…なんで私がこんなことしなきゃいけないんだ!
「夏目にはこれからもここに来てもらうことになるんだから、ハロに慣れてもらわないと。」
「えっ!?」
風見さんが風邪引いたから仕方なく来たんじゃないのかと、驚いて後ろを見上げると、降谷さんは淡々と話した。
「信用した人間しかここには来させたくない。僕が動けない時は色々お願いしたい。」
「…光栄…ではありますが、犬は風見さんに飼ってもらいませんか。」
「ない。ほら、早くハロに慣れろ。」
ひーーん。
本気で泣きたい。
「今“待て”の状態だから、“よし”と言ったら食べる。」
「…ひっ!」
降谷さんもしゃがみ犬に聞こえないよう私の耳元で言った。
そんなこと言われても怖くて仕方ないのだ。
「…夏目。ポアロの時間がくる。早くしろ。ハロも目の前で餌を見させられてかわいそうだろう。」
「うっ。」
私は指先でちょこっとつまみ、右手を最大限に伸ばした。
「………よ」
“よし”って言おうとした瞬間、白い塊がダッと飛び出してきた。
「ふぁぁあああぁーーっ!」
私はぺっとオヤツを放り投げる様に手を離し、逃げた。
「…夏目。餌しか食べないから噛まれる事はない。」
「…ふ、降谷さん……。」
もうこんな拷問やめてくれ、と、懇願した。
「……夏目。」
「もう…ほんと泣きたいです。犬無理…。」
「夏目。…離れろ。」