第7章 ruff ruff !?
降谷さんは犬を退ける様子もなく、ポアロに着ていく服を着て、優しそうな目で水を飲みながら犬に頭や顔をもみくちゃにされてる私を見下ろしていた。
ーーくっ、なんだその表情!
「こ、こわいっ!ちょっ!降谷さんっ!」
笑ってないで本当に早くどけて!
わんちゃんは私が遊んでくれてると思ってるのか余計テンションを上げて頭をぶつけてきたり、跳ねたり。
「情けない。そのくらいどうにかしてみろ。」
「い、犬をどうにかする仕事なんてないですっ!」
「ははっ。」
「ちょ……きゃ…耳ダメっ…舐めないでっ!いぬっ!」
「…。」
「ふふっくすぐったい…っ。やっ……」
顔中舐めまくられ、もうしんどい。
「…ひゃっ…みみ…だめだって。」
「…ハロ。」
低い降谷さんの声が聞こえた瞬間、私の上の犬がぴたりと止まって顔を降谷さんの方に向けた。
「おすわり。」
わふっ。
と、返事をすると、犬はさっと私の上からどけてちょこんと床の上に座った。
「はぁはぁ。死ぬかと思いました。」
よろよろと起き上がり、べちょべちょの顔に絶望感が半端ない。
「ほら。」
タオルを顔に投げられ私は必死で拭いた。
…匂いも無理。
キッチンを勝手に借りて水でタオルを湿らせ拭いていく。
「何が無理なんだ。可愛いだろう。」
「大きい犬はまだ大丈夫なんですけど、小さいと…なんていうか、なんかぞわっとします。抱っこしたら壊れちゃいそうで。」
「ハロ。待て。」
少し厳し目の声で犬にそう言うと、降谷さんは棚から犬用のおやつを私の手に渡した。
私は全力で首を振った。
「む、むりです!私犬嫌いなくせに犬に好かれやすくて…!絶対飛びつかれます!」
「ハロ。そのまま。…大丈夫。ハロは僕が躾けてるんだ。」
今までそう自信満々飼い主に騙されてきた。
『噛まないわよ』
『急に飛びつかないから。』
『顔を舐めたことないよ。』
全部嘘だ。