第6章 素直に
キョトンとして私を見下ろす安室さんに、どうにか離れてほしくて目で訴えた。
「…なんです?」
「…いやっ……あの…!」
「お酒のせいで顔が赤いですよ。」
「ち…近い…です……っ。」
右手で押して、目で訴えても、安室さんはじっと見下ろすだけで動いてくれない。
「……。」
誰にも聞こえないくらいすっごく小さなため息が聞こえた。
「…大丈夫ですか!?」
「へっ?」
「わかりました。帰りましょう。」
「ん?」
急に安室さんが言うと立ち上がり、私の肩を掴むと、ぐっと立たされた。
「どうしたのー?」
「すみません、めぐみさんお酒が回ってしまったみたいで…。」
「珍しいねー。大丈夫?」
「えぇ、お店の前でタクシー呼んで帰ります。」
…ん?
りっちゃんに説明し始める安室さんに頭が付いていかない。
「帰るぞ。」
耳元でそっと言われ、身体がかたくなった。
…酔ったことにしろってことかと、私は足に力が入らないふりをして、安室さんにしがみついた。
「お店の前まで送るよー。」
「すみません。これ。2人分。」
私は俯いていて、状況は見えなかったが、安室さんがりっちゃんに今日のお金を私の分まで払ってくれているようだった。
「りっちゃん…ごめんね?」
「ううん、お酒にやられるなんて初めてじゃない?気をつけてね。」
「…うん。」
安室さんの二の腕にしがみついて、酔ったふりをする。
「そう言えば、お二人って元々どんな関係なの?」
「僕が喫茶店の店員してて、めぐみさんがお客さんとしてたまに来てくれるんですよ。」
「へぇ、そこから合コンにまでいくってすごいわね。」
「めぐみさんが合コンのお話ししてたから、是非ってお願いしちゃいました。」
「また、機会あれば飲みましょうね、安室さん。」
「えぇ、是非。あ、タクシーきたので失礼します。」
「またねー!」
りっちゃんに手を振り、私はされるがままタクシーに押し込まれた。