第43章 どっち
座布団の上で片足上げて、態度は悪いけど表情は真剣だった。
「旅館は俺がどうにかするから。姉さんは警察戻んなよ。」
「むっちゃん?」
やりたいことあるって勝手に大学辞めたのに…?
「どうにかってどうするんだ。好き勝手生きて来たお前が口を出すな。」
父は厳しめにそう言った。
「大学は編入試験受けるために辞めたんだ。試験は受かったから他の大学に編入する。経営学を学ぶために。」
「…経営……?」
「旅館の経営だよ。旅館は俺が継ぐ。」
破天荒で継ぎたくないって適当な大学入ってバイトばっかしてた武蔵が…そんなことを考えてたことに、私を含め両親も驚いていた。
「2年学んでくるから、待ってて。あと、大学の友人に家が工務店って人がいたから、工事も頼んだ。寺の修繕とか専門の工務店なんだけど、事情話したらお金はゆっくりでいいって言ってくれた。」
「…武蔵。お前。」
「あの如月ってやつ、昔から嫌いだったんだよ。俺が継ぐのが怖かったのか、いつも変な顔で俺を見て来てさ。姉さんとも結婚してほしくなかった。」
武蔵は足を正し、私の横で背筋を伸ばし座ると両親を真剣な目で見つめ言った。
「旅館の勉強をさせてくれ。親父たちの旅館、俺にも守らせてほしい。」
父は何も言わず、急に立ち上がると部屋を勢いよく出ていった。
「…親父?」
「ふふふっ。嬉しくて出てっちゃった。」
母も目に涙を浮かべ、武蔵の頬に手を伸ばした。
「武蔵が一人ここまでしてくれてたなんて気づかなかったわ?」
「どう見てもしたくもない結婚しようとしてる姉さんを見てられなかった。…姉さん警察戻れるんだろ?」
母と武蔵が心配そうに私を見てきたので、私はゆっくりと頷いた。