第43章 どっち
母と話していると私の後ろにいる降谷さんに気付き母は口をつぐんだ。
「あっ、めぐみ…!ほら、彼は…?」
「えっと…私の上司。」
「うそつきなさいっ!さっき結婚の挨拶っておっしゃってたじゃないの!」
「ちょ…!ちゃんと話すから!ふ、降谷さん。」
母を抑え、私は降谷さんに話しかけた。
「ん?」
「家族に事情を話して来ます。すみません…。」
「わかった。向こうで待ってる。」
降谷さんと家族に挟まれて話すのは照れくさかった。
「…如月さんとは結婚しない。」
先程の部屋に戻り、私は父と母と武蔵の前ではっきりとそう告げた。
「さっきの彼がいるから?降谷さんだったかしら。」
母に言われ私は頷いた。
「それもある。だけど…如月さんとは結婚出来なくなったの。だから…。」
「いいのよ。ね?あなた。」
「少しでもめぐみが嫌なら結婚はさせないと、母さんとは話してたんだ。だから、何度も奏と結婚してもいいのか聞いただろう。」
確かに両親から無理強いされたことはない。
私が自分から結婚するって言ったのだ。
でもそうなると旅館を修繕することが出来ない。
「あと…私やっぱり警察を続けたいの。あの人…降谷さんと警察官として日本を守りたい。」
私が警察を続けるってことは、この旅館を継ぐのこもしないということ。
両親は一瞬だけ、悲しい表情を浮かべたけれど笑って頷いてくれた。
「いいの。旅館のことはまぁどうにかなるわ。ね?」
「…そうだな。少し壊れてるところがあるけど、営業は続けられる。またお金を貯めて直して、後継だってどうにでもなる。」
「……。」
私はぎゅっと胸を締め付けられる思いだった。
両親が大切に守って来た旅館ーー。私の実家ーー…。
「いいよ。姉さん。」
今まで黙って聴いていた弟の武蔵がはじめて声を上げた。