第43章 どっち
私は警察をまだ辞めたわけじゃなかった。
もう2度と彼の横に立つことは出来ないんだと思っていた。
私は顔を上げ、降谷さんを見つめた。
ーー…この人の横に…。
「如月奏。容疑は…ちょっと私にはまだわからないけれど、署に連れて行くから。」
降谷さんに抑えられていた如月の二の腕を掴み、立ち上がらせると下に引きずりそうな振り袖の袖の部分を自分の肩にかけた。
汚したら母に怒られちゃう。
「高橋も来てる。彼に引き渡そう。」
「はい。」
「…くっ。あと少しでこの旅館もうちのものになったのに…!めぐみさんだって…!」
「…。」
如月には文句を言ってやりたいし、殴ってやりたいけれど、立場上手を出すのはまずいからぐっと我慢した。
こんなやつに旅館を半壊され、危うく乗っ取られるところだったのだ。
建物の裏を通り、裏口に出かかったところに、高橋と影くんが立っていた。
「よっ。そいつ。俺らが連れてくよ。」
「高橋…。なんか、まだよくわかってないんだけど私が辞めないように色々してくれたみたいだね。ありがとう。」
如月を引き渡し、車に押し込んだあと、私は高橋を見上げ言った。
「いや?めぐみが利用されたって気付いたのも、辞めないように手を回し、俺たちに指示出したのも。」
「全部降谷さんですよ。」
高橋と影くんがにんまり笑って言った。
私は驚いて降谷さんの方に視線を向けたが、降谷さんは風見さんに電話をしているようだった。
…でも、さっきは高橋たちがしてくれたって。
「めぐみがいなくなって困るのは降谷さんだろ?」
「えっ!?」
「もう、みんな知ってるよ。」
二人の関係。
と、高橋は私のおでこを指でつんっとつついた。