第43章 どっち
「こ、これはダメです!」
「それだけ色々あるんだからヒモ一本くらい貸せ。如月を縛る。」
それだけ色々あるって!全部意味がある装飾だよ!
「だからって帯締めはダメですよ!帯全部崩れちゃいます!流石に…!」
「着物はわからない!なんなら帯貸せ!」
そんな漫画じゃないんだから、ヒョイっと取って伸ばして敵を縛ったり出来るわけがない。
「せめて、帯揚げを…!」
私は帯の上で結んである赤い正絹の帯揚げをほどいた。
これならちょっと後ろが崩れる程度だ。
降谷さんは如月を抑え込み、私から帯揚げを受け取ると腰の後ろで手首を結んだ。
後ろに綺麗に結われていた帯が少し下にズレはしたが、まぁしばらくは大丈夫だろう。
「もう、本当に最初から最後までわちゃわちゃと…。」
「くくっ。めぐみがぶつかるからだ。」
「横暴っ!よくこんな人の下で働いてたなって自分でもびっくりしちゃいますよ!」
如月を抑えながら笑う降谷さんに私は言ってやった。
確かに私がぶつかったせいで手錠を落としたのだけれど…。
「あなた程度なら、手錠二つくらい持ち歩いてください。」
「全部予備持ってたら服の下重装備になるだろ。…これからはめぐみが横でもう一つ持っててくれるだろう?」
「…私はもう辞めちゃったから。」
草履を脱いだせいで汚れた右足の足袋を見つめた。
真っ白だった足袋が泥だらけだ。
また復職ってなると、採用試験に身体検査、面接だってあるだろうし、もしかしてもう一回警察学校からスタートしなくちゃいけなんじゃないだろうか。
「大丈夫だ。」
「え?」
「めぐみの退職届は高橋たちみんなが人事の手に渡らないようしてくれた。」
「う、うそ……本当に……?」
「あぁ。」
「私ーー…まだ。」
「あぁ。めぐみはまだ警察官。僕の部下のままだ。」
私は胸の前でぎゅっと両手を握りしめた。
ーー…私。まだ降谷さんの部下なんだ。