第43章 どっち
作った握り拳で、目の前の男を殴ってやりたい。
「うちの両親が来られないから、顔合わせは後日でもいい。僕たちはお互いよく知る間柄だしね!あ!じゃあ、今からもう役所に行かないかい?」
よく知る間柄だというくせに、そんな私たちを騙していた目の前の男を殴りたい。
こんな状況でも籍を入れようとするこのバカを。
奥歯を噛み締め、ふるふると震えていると後ろから降谷さんが私の肩に回していた手に力が入った。
「悪いが、めぐみは僕と結婚する予定だ。」
「…はっ!?」
「……誰だ。」
「知らない男に名乗るつもりはないな。」
ニヤッと、笑う降谷さんはどこか楽しんでるようだった。
「…知らない…?めぐみさんの婚約者だぞ!」
「しかしめぐみが好きなのは僕だ。」
怒り狂う如月に、余裕な表情の降谷さん。
絶対からかって遊んでる。
「めぐみに触れていいのは僕だけだ。」
「ちょっ…!」
人前で言う事じゃない!
と、私は降谷さんから離れようとしたが、肩を抱き寄せる降谷さんの手がそれを許してはくれなかった。
「結婚しませんって!」
「いや、そこは否定するなよ。」
話を合わせろ。と耳打ちする降谷さんの頬をぐっと押し返した。
警察を辞めた今、降谷さんは私の上司でもなんでもないんだ。
言う事聞かなきゃいけないってことはない!
「結婚しませんっ!」
「ははっ!なんだ!めぐみさんは嫌がってるじゃないか!」
如月は大声で笑った。
「お、おい。めぐみ。」
「あなたはもう私の上司じゃないんだから…!」
“降谷さん”って如月の前で呼ばないせいで、何て呼べばいいのか困り“あなた”とつい呼んでしまったが、許して欲しい。