第43章 どっち
降谷さんは目をパチクリとさせていた。
「…言ったことなかったか?」
「ないっ!」
「まぁ…その……。」
ふぃっと私から視線を逸らし、どこか気不味そうにしている。
私はじっと降谷さんの言葉を待った。
たった一言『好きだ』って言うだけでいいのに。
「プロポーズもなく結婚なんてしませんよ。」
「…したようなもんだ。」
「してない。」
本当に不器用な人だ。
降谷さんの言葉を待っていると、降谷さんの携帯がなり始めた。
「なんだ。…え?わかった。こちらにくるかもしれないな。あぁ、引き続き頼む。」
淡々と話す降谷さん。
それと同じように淡々と自分の気持ちを私に言うだけなのに。
電話を終えた降谷さんがこちらを向き、真剣な表情で話し出した。
「早朝に如月邸に向かった風見、ローラ達からだ。社長とその奥さんはいて逮捕したが、息子である奏はすでにいなかったそうだ。」
「…?」
「もしかすると、こっちに来ているかもしれない。」
「…如月奏も共犯…ですよね?」
「そうだ。」
バイトをして、慕っていたうちの両親を騙した男。
「行くぞ、如月奏を捕まえる。」
「……私はもう警察を辞めてます。」
「許可した覚えはない。」
そんなこと言ったって私はもう退職届を提出して受理されているはずだ。
それに、辞めた後も降谷さんは何も言わなかった。
「確認しておく。」
「…はい。」
「めぐみは辞めたいのか。」
真っ直ぐ見つめられて、私は固まってしまった。
別に警察官が子供の頃からの夢だったとかそういうわけじゃない。
正直警察に対して未練はない。
ーーー…だけど。
「僕の横に立ってくれるんじゃなかったのか。」
「…っ。」
「めぐみがいないと業務に差し支える。」
「……降谷さん。」
「君を手放すつもりはない。」