第6章 素直に
私は携帯を弄りながら、距離をとりつつ男を追跡した。
タイミングよく服装は警察官にはまるで見えないのが功を成した。
あまりヒール音を立てないよう付いて行く。
すると前方にあるカフェの前にキャップを被りラフな格好した降谷さんが立っていた。
男はバーボンは知らないのだろう、降谷さんの前を普通に通り過ぎて行ったので、私もそのまま進むと降谷さんはにっこり笑って私に手を上げた。
「時間通りですね。」
「…安室さん。お待たせしました。」
そうかーー…今は安室さんなんだな。
「じゃあ、行きましょう。」
「はい。」
安室さんの横に立って歩く。
談笑するふりをしながら、男の後ろを私たちはついていった。
男が走り出さなくてよかった。
このヒールではとてもじゃないが走れない。
ーー見栄を張って慣れない靴を履くんじゃなかった。
後悔したところで何にもならないので、私は安室さんの肘の辺りに手を添え、必死で歩いた。
「君の記憶力に感心するよ。」
にこにこと安室さんの笑顔ではあるものの、話し方は降谷さんだ。
小さい声で私の耳元で囁いた。
「いえ…なんとなく覚えてただけで。」
私も笑顔で答えた。
「あの男は滅多に表舞台に出てこない。資料も写真もなく似顔絵であの男についてはほんの数行だけだった。」
「だからこそ覚えやすかったです。」
安室さんはふわっと笑うと私の手首を引き、路地裏に連れ込むと汚いビルの壁に押し付けた。
「…っ!?」
「そのままじっとしてろ。……撮る。」
壁に手をつき、私の耳元で話しているが、右手には携帯が握られていた。
男の写真でも撮っているのか。一体何の写真…と、私は顔を横に向けようとしたが、顎を掴まれ正面を向かされた。
ヒールのせいで背が高くなった私は、降谷さんと近くなって、端正な顔立ちが目の前にあって固まってしまった。
「動くな。不自然だ僕をみてろ。」
「…は……はぃ…。」