第40章 結婚
結納の日程が決まった。
それ以来、袴姿の如月さんが私の前に現れては嬉しそうにしていた。
今日も厨房から出られる裏口で荷物を分ける作業をしていたら、如月さんに話しかけられた。
「めぐみさん。お疲れ様。」
「如月さん。お仕事大丈夫ですか?」
「うん。今は休憩中だから。」
私が警察だった時から、ここでバイトとして働いていたのだから、私より仕事は出来るし、後々ここを継ぐ優秀な人なのだ。
でも、私の周りでチョロチョロしすぎじゃないか?
「それにめぐみさん。“奏”でしょ?」
「…奏さん。」
段ボールに手をかけ、荷物な中身を確認しようとしたら、手首を掴まれ引かれた。
「今週末には結納だし。籍は早めに入れよう。」
「…は、はい。」
「式はゆっくり旅館の繁忙期じゃない日にしようね。」
頬に手を伸ばされ、ゆっくりの撫でられた。
降谷さんとは違う感触。
ポアロで水仕事もあって、紙に触れる機会も多くて、危険なことばっかりのせいか、少しだけ硬く…でも、大きく温かい手だった。
手を繋いで歩いたこともないけど、頬触れるその手を忘れたことはない。
それでも、私は如月さんの手を振り払うことはできなかった。
「…めぐみさん。」
「っ、仕事中はダメです。」
空いてる手で如月さんの胸を押そうとしたが、如月さんは構わず顔を近づけて来た。
ーー…やだなぁ。
でも、夫婦になるんだもんなーー…
なんて、何故か頭の中は冷静だった。
すると、如月さんに掴まれていた手首が、また違う手で掴まれ後ろに引っ張られた。
「…っわ!」
「すみません。」
「えっ?…え?」
黒髪にキャップを被り、作業着を着た男性だった。