第40章 結婚
むすっと拗ねる武蔵に私は微笑んだ。
「いーの。本当に嫌だったら、結婚して、改装だけ終わらせたら離婚しちゃえばいいんだから。…騙してるみたいだけど。」
「結婚しないと建物直してくれないのが嫌なんだよ。聞いたけど如月奏ってやつ、姉さんのこと昔から好きみたいだし。」
「好きでいてくれるならそっちの方がいいじゃない。」
仲が悪いより、そっちの方が良好に進みそうだと笑えば、武蔵はもっとうつむき唇を尖らせた。
「姉さん…俺が……」
「ん?」
「俺が…っ!」
何かを言おうとした瞬間、食堂の扉が開けられた。
入ってきたのは上品な袴を着た男性だった。
誰だろうかとそちらを見ると、私と目があった瞬間、爽やかな笑みを浮かべまっすぐこちらに向かってきた。
「めぐみさんっ。」
「ひっ。」
反射的にのけぞってしまった。
「やっと会えた!」
「…?」
誰だ。
ちょっといやらしい顔つきが無理かもしれない。
「如月です!如月奏!今回は結婚の話を受けてくれてありがとう!」
「…え。」
小さい頃遊んだことあるし、顔だって覚えてる。
ーー…こんなんだっけ!?
ぞぞっとした。
子供の頃の記憶で結婚を承諾したのを少し後悔した。
いや、きっと慣れる。
ずっと一緒にいれば…慣れる……はずっ!
背はさほど高くはないが、ほっそりとしていて、髪の毛はオイルがベッタリとテカテカに塗られ、身だしなみには気を使っているようだったが…
目が…目が苦手っ。
獲物を狙うかのような、にんまりとした目が!
「めぐみさん。結納はいつにしようか。」
「……へ。」
ねっとりとした話し方に背中がぞっとした。
ーー…生理的に無理かもしれない!…慣れるかなぁ。