第38章 元上司 降谷零の作戦
僕が調べると言っても、信用できる上司に尋ねるしかない。
しかし“夏目めぐみ”というたった一人の部下のために聞いても僕の上司は気にも留めないだろう。
なら、聞くことはひとつ。
「すみません、管理官。ここ最近、僕を落とそうとする人物に心当たりはありませんか。」
僕は車の中で黒田管理官に電話で尋ねた。
めぐみが辞めさせられたのは恐らく僕を狙ってのことだろうと思った。
僕を調べていくうちに恋人であるめぐみを狙ったーー…。
電話の向こうで管理官は、小さな声で唸った。
『何故そう思う。』
「…少し僕の周りに変化があったので。」
『……そうだな。無いことはない。』
管理官と近しい人なのかもしれない。歯切れの悪い言い方だった。
『今度話そう。』
そう言って電話を切られた。
やはり、僕に関係していたようだ。
僕の周りから攻めて追い詰め僕を落とす気かもしれないが、悪いがそんなことで僕が引くとでも思っているのか。
「…そっちがその気ならこっちだって手段を選ぶつもりはないからな。」
ポアロに向かう車内の中で、まだ知らぬ敵に向かって言い放った。
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数日後、黒田管理官から送られてきた極秘の資料に全てが書かれていた。
「九条雅…警視庁の警視か。」
公安にいたため、あまり表舞台に出てきていないようだ。
僕を引き摺り落とし、自分が育てた人物をゼロに当てがいたいようだった。
「そして自分は警察庁で上に上がりたい…か。」
自分がのしあがるために邪魔な人物を落としていく。手始めがめぐみということのようだった。
「めぐみの退職届はその男が持っているんだな。」
めぐみが辞めてもう二週間。
あまり時間がない。
「1ヶ月以内。そうすれば間に合うはず。」
めぐみが本当に辞めたいのか。いや、めぐみの意思など関係ない。
めぐみは辞めさせない。
「手放すつもりはない。」