第37章 本音
あの日ーーー…。
降谷さんと道場で分かれて執務室に帰る途中、黒髪でオールバックの一人の男性に話しかけられて、部屋に案内された。
「あの…」
「悪いね、急に呼び出して。」
私たちが使うような会議室とは違って、椅子やテーブルが雰囲気が違った。
パイプ椅子じゃなく、しっかりとした柔らかい椅子に、木目調の重そうな机。
上官や国の偉い人たちが使っているんだろうなと、簡単に想像が出来た。
「役職は明かさないが、君たちを管理している九条という。」
ーー…九条。知らない名前だ。偽名…の可能性もあるかもしれない。
「君は降谷零と関係を持っているね?」
「…っ!?」
まだ報告はしていないはずだ。
私たち警察官は誰かと交際をする際、上司に申告しなければならない。しかし私たちは公安だ。
公安に所属する前に全ての身辺調査は行われているはずなので、その辺りは心配していなかった。
だから、タイミングをみて後々申告しようと、降谷さんとは話をしていたはず。
なのに、なんでこの九条さんは知っているんだろうか。
「ゼロにももちろん上官はいる。私はそのうちの一人だ。」
「はい。」
ーー…警察庁の人なのだろうか。
色々聞きたいが、質問ができる雰囲気では無かった。
しかし次の彼から出た言葉に私はさらに何も言えなくなってしまった。
「悪いが、彼と交際することは許可できない。」
「彼は今仕事に集中してもらわないといけない。」
「彼ほどの人材が使い物にならなくなるのは困るんだ。」
「今は君は障害でしかない。」
などと、降谷さんから別れる理由を延々と言われ続けたが、あまりの衝撃に最後の方は頭に入ってこなかった。
「何をすべきかわかってくれるかい?」
「…私に警察を辞めろと…言いたいのですか?」
「理解が早くて助かるよ。」
唇が冷たくなって感覚がなくなってきている気がした。
「君には警察を辞めてもらいたい。」