第35章 どうか
影くんと二人でご飯を食べに行ったことは気にしていないようだったが、
自分もデートしたいと不貞腐れる上司が愛おしくて仕方ない。
「降谷さんの隙間時間でも、短い時間でも構いません。私が合わせるので私とデートしてくれませんか?……零さん。」
「来週、どこか時間を作ろう。」
急に優しく微笑んだ降谷さんが私の頭の後ろにまとめた髪の毛の先に触れた。
「初デートはどこか遠くにドライブとかどうですか?」
「めぐみが運転してくれるのか?」
「構いませんよ。」
「いや冗談だ。僕が出すよ。」
「ふふ、そう言ってくれるかなって思ってました。」
降谷さんの膝に手を置き、見つめ合う。
…一応ここは警視庁だ。
と、思いながらもキスをするのではと期待した。
「ところで。」
「…ん?」
しかし上司は急に目を細め、私を見下ろした。
「影月にデートを条件に何を調べさせたんだ?」
「…。」
まさか聞かれると思わなくて、準備してなかった私は何も言うことができなかった。
「めぐみ?」
「いやっ、あのー…それは捜査のことなので…。」
しかしこの言い訳は悪手だった。
「ほー?捜査のこと、ね。なら、上司である僕に報告すべきだろう。なんだ。」
「わー…。」
「めぐみ。」
じとりと、上司の顔で言われたらもう言うことを聞かなければならない。
「降谷さんのことを調べてもらいました。」
「あの時のか。」
降谷さんが負傷した連続爆破事件の直前に、私が頼んで機密事項を影くんから見せてもらった件だ。
「なんで知りたかったんだ。」
「…お、怒りませんか?」
「さぁ。内容によるな。」
本当に大した理由じゃないのだ。