第35章 どうか
私は、みんながパソコンに集中しているタイミングでそっと執務室を出て行った。
降谷さんのところに行くなんて言ったら、『なんでお前が』ってなりそうだから、さもトイレに行くかのようにさりげなく降谷さんを探した。
資料室や会議室、降谷さんがいそうなところをのぞいたが見当たらなく、銃の射撃場にもいなかった。
だけど、机の感じからして高橋のいう通り、帰った様子もなくきっとどこかにはいるはずだ。
「あ。」
以前風見さんが降谷さんと訓練して一度も勝てなかったと言っていたことがある。
もしかしたら道場にいるかもしれない。と、私は上の階へ向かった。
大きな道場は人がよく出入りしているが、小さな道場ならあまり人は来ない。公安がよく使う場所がある。
私は人気のない奥にある、道場に向かった。
畳をする音がするから、誰かはいるようだ。
コソッと顔を覗かせると、白い道着を着た降谷さんが1人、形をとっていた。
汗と髪の毛がキラキラと輝いて見えるのは惚れているからだろうか。
「見てないで入ってこい。」
「…。」
ふぅ。と、呼吸を整えながら降谷さんが言った。
やっぱりバレてた。
「どうした。」
「いえ。私も訓練したいなーって。ご一緒にいいですか?」
「……。」
降谷さんから返事はなかったが、私も一緒にすることにした。
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道着に着替え、私も道場に足を踏み入れた。
「降谷さんはボクシングでしたっけ?」
「あぁ、だが柔道剣道は基本的にやったし、逮捕術ももちろん上位だった。」
上位ってことは、警察学校での事だろう。
大会に出たりすることはないだろうから。
「ふふっ、さすがです。」
私は、ストレッチを終えると、降谷さんの前にたった。
「…?」
「お手合わせ、お願いします。」
「めぐみが?」
男女の体格差以前の問題な気もするが、物は試しだ。
負けることくらいわかってる。