第5章 デート
「それだけ集中していたんだろう。…で、何かわかったか?」
机に座ってパソコンをしていた私の真後ろに立って、私のパソコンの画面を覗き込んだ。
「あっ…えっと。まだ幹部の事件だけですが…。彼らの周りの手下…とでも言いましょうか、小さな事件ですが、少し活発化してるようですね。」
「やはりか。」
降谷さんは私のパソコンのマウスを持ち、私の今までに作った資料を見ていった。
ーーー…近い。
後ろからパソコンの画面を見ているせいで、私の顔の真横に彼の顔が来ていた。
「潜入してる僕の組織の下っ端メンバーが何人か殺された。もちろん警察にはまだバレてないから捜査もされてないが。」
「それが元浅原組のやつらが?」
「…恐らくな。虎視眈々と組織に復讐する機会を狙ってるんだろう。この情報を組織に売れば、組織からの信用を得られるかもしれない。」
バーボンの格好でニヤリと笑う降谷さんはまさに悪の組織の幹部だと思った。
「関係のない事件も入ってると思いますので、もう少し時間をください。未だに浅原組として、動いてるメンバーを絞ってみせます。」
「…。」
少し上を見上げ、降谷さんの方を見ると、降谷さんもこちらを見下ろした。
ーーー…ち、近いって。
暗い資料室。
小さなパソコンのモーター音だけで、とても静かな空間。
「…っ。」
あまりのイケメンに私はさっと視線を逸らした。
ーー不自然だっただろうか。
心臓の音がうるさい。
「…夏目、合コンいくのか?」
「…へ?」
そんなこと聞かれるとは思わなくて私は再び降谷さんを見上げた。
「時間が合えば行く予定ですが…。」
「…そうか。」
むっとした表情になり、私から離れると机の上の膨大な量の資料をパラパラと見始めた。
ーーまた怒ってる。
「あっ!降谷さんも彼女いませんでしたよね?行きます?高橋に言っときますよ?」
そうか!私たちばっかり盛り上がってつまらないんだな!
素直に行きたいって言えなくてそんな怒った態度になっていたに違いないと考えた私は、手を合わせ提案した。
「…いや。いい。」
降谷さんは、はぁっと、ため息をついて呆れた声でそう言った。