第33章 ポアロにて
「めぐみはたまにそうやって真っ直ぐ僕に気持ちを伝えてくれるな。」
ーー…降谷さん?
私は箒を持ってまま見上げた。
私の頬に触れる彼は優しく微笑んでいて、降谷さんなのか安室さんなのかわからなくなってきた。
「やきもちとか可愛いな。」
「…やっぱりこれってやきもちなんですかね。」
「そうだろ。」
ーー…降谷さんだ。
降谷さんだとわかった瞬間、さっきよりも胸がドキドキし始めた。
「でも、安室さんなのに。なんか…不本意です。」
「ふっ、なんだそれ。」
頬を撫でていた降谷さんが耳の辺りを触れ、髪の毛をサラリと撫でていった。
「めぐみは、わがまま言わないから。あまり会えなくても、仕事ばっかりでも、文句一つ言わない。」
「降谷さんが忙しいのはわかってますし。私だって仕事ばかりです。」
降谷さんとデートしたり、2人でじゃれあったりするよりも、私は前を見る彼の横に立って一緒に仕事に全うしたい。
だけど、にこにこ笑って楽しそうにしてる安室さんを見ていると、私も混ざりたいって思ったのも確かだ。
「わかってる。そんなめぐみが梓さんに対して嫉妬して、こうやってふてくされてるの見れて、少し嬉しいんだ。めぐみのわがままを見ているようで。」
「…わがまま。」
「もっと甘えていいんだぞ?」
私自身仕事人間で、彼氏に甘えてきたことなんてなかった。
唯一、じんぺーくんにだけは甘えそうになって、このままじゃダメだと、刑事になることを理由に私から別れたくらいだ。
「甘え方が、わかりません。」
「そうだな…。」
顎に手をやり、考える降谷さんを見上げ、私も降谷さんに何かあるかと考えた。
「降谷さんも私に甘えてください。」
「…。僕も?うむ。」
仕事ばっかりだった私たちがお互いに恋人への甘え方を考えるという、なんと滑稽なことだろう。